私たちの使命
私たちの研究室は、最新の創薬支援技術を活用し、主に殺菌剤、殺虫剤、除草剤、植物成長調整剤といった新しい農薬を創出します。基礎研究と応用研究における最新の技術を融合させることで、農業分野に貢献する新規有効成分の発見を目指しています。
私たちは、以下の高度な創製支援技術を統合的に活用しています:
これらの専門技術を組み合わせることで、革新的な農薬の開発を加速させ、持続可能な農業の発展に貢献してまいります。私たちの研究は、農薬の作用部位や植物ホルモン受容体を対象に含めることで生合理的な展開を行っています。
研究成果例
以下は私たちの研究成果の一例です。私たちはインハウスライブラリのスクリーニングを通じて、世界初の KAI2 阻害剤を発見しただけでなく、タンパク質との結合様式に基づいてさらに活性上昇を目指して設計・合成を行い、新たな高活性化合物を発見しました。この成果はトップジャーナルである Nature Communications に掲載されました ((http://www.nature.com/articles/s41467-024-54801-1).
京都大学大学院生命科学研究科の宮川拓也准教授が率いる研究グループとの共同研究において、私たちはKK181N1を開発しました。これは、森林火災時に生成される煙由来分子であるカリキン(KARs)の受容体KAI2を選択的に阻害する初の化合物です。構造生物学を用いて、その結合様式を明らかにしました。このトリアゾールウレア型化合物はKAI2に非共有結合で結合し、モデル植物であるシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)におけるKAR誘導形質を選択的に抑制することができます。さらに、KK181N1はD14受容体を介したストリゴラクトン(SLs)シグナル経路には影響を与えず、KARシグナル経路のみを特異的に阻害することを確認しています。D14受容体はKAR受容体と機能および受容する化合物が類似しているため、この発見によりKARとSLsの類似した作用を持つ生理機能を区別することが可能となりました。私たちの研究は、KARの基礎研究および農業応用に新たな知見を提供します。
図1(a) は、シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)由来のKAI2(AtKAI2)とKK181N1の複合体の結晶構造を示しています。 図1(b) は等温滴定熱量測定(ITC)のサーモグラムであり、KK181N1がAtKAI2に結合することを確認しています。この結合は、ポケット内の疎水性残基の配置によってインドール環のメチル基の向きが制御されることや、ポケット底部の水分子と周囲の残基によって媒介される水素結合ネットワークによって大きく影響されます。ポケット底部の水分子と周囲の残基によって媒介される水素結合ネットワークによって大きく影響されます。特に、触媒トリアド(S95-H246-D217)の形成が重要でした。これらの相互作用により、KK181N1はKAI2に高い親和性を示し、KAR拮抗剤として作用します。この知見に基づき、私たちはより強力な誘導体であるKKT3054を設計し、その強力なKAR阻害活性を実証しました (図3).
メンバー
浅見 忠男 博士
特任教授
村瀬 浩司 博士
特任教授
高橋 郁夫 博士
特任准教授
北畑 信隆 博士
特任助手
太田 鋼
特任助手
草島 美幸 博士
客員研究員
薛 翠萍
共同研究員